年金による、あの大騒ぎはいったい何だったのでしょうか。
いわゆる「消えた年金」問題のことです。
データの欠落や処理の不備により、多くの人がもらえるはずの年金を失っていた問題です。
旧社会保険庁の管理の甘さが芋づる式に露呈し、ついには社会保険庁は解体され、業務は年金機構や厚生労働省などに分担されました。
これに端を発して、今度は年金財源問題にまで話が及び、これに議論が集中する結果となりました。
「年金は破たんするのではないか。将来もらえなくなるのではないか」という根本的な問題です。
外国にも年金はあるの?2つの制度とは
そもそも年金制度は日本だけではなく、もちろん他国にもあります。
また、年金には大きく分けて2つの方式があり、それは「積立方式」と「賦課方式」です。
「積立方式」とは、自分で毎月積み立てていって、さらに運用益がプラスされて老後に支払われる方式です。
つまり、自分の分の年金は自分で積み立てて、多少の運用益はあるものの、それ以上多くはもらえないというものです。
日本では「確定拠出型年金(DC)」として存在します。
一方、「賦課方式」とは、現在の日本の年金制度の仕組みで、現役世代が払った年金は、そのまま受給者に払われるというものです。
上昇する物価スライドを反映するので、インフレに強いと言われているのですが…。
マレーシアの柔軟な年金制度「EPF」とは
ここで、マレーシアやシンガポールの年金制度を紹介します。
マレーシアでは「EPF」、シンガポールでは「CPF」と呼ばれる年金制度は、方式で言えば「積立方式」です。
自分と企業で半分ずつくらい積み立てる、日本の厚生年金のような感じです。
さらに、運用益もプラスされ、マレーシアのEPFだと大体年率6~7%ほどもあります。
マレーシアの銀行定期預金の利率よりも大幅に高率です。
しかも複利なので、15年も積み立てていれば、元本の2倍近くには膨らんでいることでしょう。
このEPFには面白い点があり、積み立てたお金のうち30%までなら下ろせるという点です(用途は限られる)。
日本のように、65歳まで待たなくてもよいのです。
逆にいえば、早くにお金を下ろしてしまって、老後に困る可能性もあるということです。
しかし、子どもの大学進学費用に充てたりする人も多いようで、見方を変えれば、子どもに
投資して稼いでもらい、将来自分に”運用益”をもらたしてくれるという見方をする人もいます。
これ、私の奥さんの実家の話です(笑)
そしてもう一つ面白い点があり、EPFが担保として使えるという点です。
例えば、マイホームを購入しようとローンを組む際、日本であれば源泉徴収票や納税証明書で収入証明をするのが一般的です。
しかしマレーシアではEPFでも審査をしてもらえます。
転職を何回していようが、EPFにしっかりとお金が積み立てられていれば、審査は通ります。
マレーシアやシンガポールは頻繁な転職が当たり前ですので、このような習慣が生じたものと思われます。
EPFというものはまさに資産・投資商品のような存在です。
マレーシア企業で働く外国人でも加入でき、帰国時には全額受け取ることが出来ます。
日本で外国人が働く場合、日本の年金に加入でき、日本人同様に受け取れますが、所得税
20%が引かれた形で戻ってきます。
所得税の還付も可能ですが、書類を揃えて税務署へ出向く必要があり、非常に面倒で、汚いやり方と思わざるを得ません。
将来年金は破綻する?しない?
現在日本の年金で問題になっているのは、将来果たして年金制度が維持できるのかということです。
もっと具体的に言えば、払った分だけきちんと受給できるのかという点です。
特に私のような若年~中年層が不安です。
ニュースでは、人口動態が現状のままなら、まず回収できないと言われています。
よく言われているように、若者が支える高齢者の数は、年々増えています。
逆に、現在年金を受給していたり、もう少しで受給開始となるような、団塊世代とその周辺の人々は、払った金額より受給金額の方が多いとされています。
もちろん、物価スライドの影響もあります。
年金は、受給時の物価を反映した金額で支給されるからです。
私はこのような現象を「逃げ切り」と呼んでいます(言い方が悪くて、その世代の方には失礼ですが)。
「途上国」と言われているマレーシアでさえ、大幅な運用失敗が起こらない限り、自分で積み立てた元本は最低限受け取れます(現状その権利はあります)。
これには年金加入者も容易に納得するでしょう。
一方、増えない年金支払者に対し受給者は増え続ける日本。
税金を投入し現状を保ってはいるものの、これがいつまで続くのかはわかりません。
日本の税収は打ち出の小づちではないので…
日本とマレーシア、両政府がアピールする年金の「安心」と「保障」。
どちらとも信頼に足るかどうかは、自分で判断するしかありません。
ただ、いくらあなたが国(政府)を誇りに思い、ラブコールを送ったとしても、国もあなたを愛してくれるとは限りません。
片思いのし過ぎは危険、ということです。